マルの物語

殺処分ゼロを願って、真実の物語。

確かに真実を見極めることは、大変、難しく感じます。

日本の愛護の現状…順調に殺処分は減少しています。但し、その減少は本当に犬猫たちと人の大切な絆の元に成し遂げられようとしているのでしょうか…?

そもそも、大切な絆を断ち切って過ちと言える道に進んでいるという事では無いのでしょうか?

白い犬

ストーリー

​山間の村で、年老いたおばあちゃんと大切な日々を過ごした白犬マル、おばあちゃんが他界した今、人間の世界は犬との大切な絆を守ることが出来るのでしょうか…

第一章

僕のパートナーは、おばあちゃんです。高齢に関わらずたくさんの野菜を作っている働き者の農家でした。おじいちゃんと死に別れて、僕は今まで以上におばあちゃんの支えになるように頑張りました。だって、おばあちゃん、80歳の半ばを過ぎて頑張っている。農家は大変だから、若い人はやりたがらない、周りの人も、みんなおばあちゃんくらいの歳で頑張っていて、やっぱり、僕の様なワンコやニャンコ達が支えている。都会に行った息子さんや娘さんはめったに帰ってこないから、おばあちゃんの支えは、やっぱり僕しかいないよね。それに、野菜を作る人がいなくなったら、みんなどうなるのだろう?都会に行けば野菜なんて必要ないのかなぁ…

そう言えば、一度、おばあちゃんの具合が悪くなった時に、少し離れたお隣りさんを、必死に呼びに行って、救急車を呼んだことがあった、おばあちゃん

 

「マルの為にも元気で頑張るよ」

 

って言ってくれていたけど…それからも、おばあちゃん、たくさん野菜を作って、みんなに喜ばれていたよ。でも、ある年から、調子を崩して寝込むことも度々になっちゃった。

 

「お前には世話になったねぇ、私が死んだら、ちゃんと生きて、優しい人のところにもらわれて、幸せになるんだよ」

 

と寝込む度に目を潤ませていたおばあちゃん…

 

今、目の前で注射器をもった先生が、僕を見ながら

 

「おばあちゃんのところに行くんだよ」

 

といっている、僕は

 

「おばあちゃんに、ちゃんと生きるって約束したんだ!生きて、幸せになるんだ!」

 

と人には理解できない声を上げました…

亡くなったおばあさんは、おばあさんなりに、身内や近所の方や出会う人に、忍なくも、自分が万が一の時の為にはと、愛犬のことを常にお願いし続けていました。逝ってしまったおばあちゃんの代わりに、息子さんや娘さんも、自分たちがどうしても飼う事が出来ない代わりに、必死に引き取り手を探しましたが、結局、見つけることは出来ませんでした…

最終的に、愛護センターへ託す…しか…

愛護センターに行くと、若い女性が小さな犬を連れて受付で職員さんと話を…、理由は聞き取れませんでしたが

 

「引き取ることは出来ませんよ」

 

と言われ、唖然とした顔を見せながら

 

「ここに来れば引き取ってくれるってネットで言ってたのに…」

 

と独り言のようにつぶやきながら通り過ぎようとした時に

 

「引き取りしないのですが?」

 

と聞くと、

 

「適正な理由がなければ引き取りません。ネットで言う様な単に自己都合の飼育放棄などで引き取りはしていないと言われました…」

 

と答えながら帰って行きました。

自分の番になり事情を説明し、引き取ることも出来ず、引き取り手が見つからなかったことを話しました。それでも再度、心当たりを確認することを進められましたが、事情もあり何とかお願いして預かってもらいました。

 

「また、無責任な飼い主の犠牲だね…」

 

と職員同士の話し声が聞こえた気がしました。

以前、殺処分をしない為に、必死に頑張る愛護センターの映画を観たことがあり、きっと、命を繋いでくれるのでは?と微かな期待をしていましたが、聞こえた言葉に、大きな不安を感じつつも、その場を後にしました。

そして、何もわからずに、たたずむワンコへ、心の中で、精一杯、謝るしかありませんでした。

息子さんが察した通り、この愛護センターでは、あくまで、収容される犬猫は無責任な飼い主の飼育放棄とするセンターです。もちろん、里親さんが見つかるまで、収容を続けるなど無く、定期的に殺処分を続けています。極力、受け入れを減らし収容数を減らし、殺処分を減らす事を目標に掲げていました。

おばあさんのお隣りさん、実はおばあさんの生前、愛犬の行末を相談されたことがありました。

 

「私がちゃんと面倒見るから安心しなよ!そんなこと心配しないで、う〜んと長生きしてよ」

 

と話し、お隣りさんは良い方で、おばあさんさんよりも、若かく、とても元気で、おばあさんは、とても心強く感じていました。

お隣りさん、お葬式の後、息子さんに本当に申し訳なさそうに

 

「マルちゃん、私が本当に引き取ろうと思っていたんだよ…でも、娘から電話がかかって来て」

 

「母さんが死んだら誰が面倒見るのよ?私は絶対、見れないから!この前、TVでやってたよ、歳を取って犬猫を飼う人がいるから、殺処分が減らないんだよって。あの愛護センターの所長も怒ってたよ。だから、いつまで経っても殺処分を無くせないって」

 

「そんなこと言っても、お隣りさんだし、それがいいワンちゃんなんだから、この前も…」

 

「そんないいワンコだの、どうでもいいの!もし、母さんが死んで、私たちが面倒を見れなかったら、私たちが無責任な飼い主って、後ろ指刺されるのよ!わかってるの?」

 

「そんな、わからないよ、どうして無責任な飼い主になるの?」

 

「決まってるじゃない、理由なんて関係無いのよ」

 

「そしたら、誰もみなかったら、どうなるんだよ」

 

「だから、お隣りさんが、ちゃんと面倒見ればいいんだよ、息子さんだって、娘さんだっているんだから」

 

「息子さんも娘さんも、都会のマンションで動物飼えないところに住んでるって」

 

「お母さんは、そんな他人の心配することないの。家族の方が大事でしょ」

 

「そんな…大切って、ワンコだって大切な命でしょ」

 

「お母さんは人が良過ぎるの!みんな、そんなこと、気にしないんだから、愛犬家とか愛猫家って言ったら、自分の犬や猫を大事に大事にすること、他の犬猫なんて、どうでもいいんだから…」

 

「…」

 

「とにかく、やめてね」

「本当にごめんね。おばあちゃんに言えなかったけど、何て謝ったらいいのか…」

 

「ご心配をかけて、本当にすいません。私たちが探しますから心配しないで下さいね、」

 

「嫌な世の中になっちゃったね。大切な命、みんなで繋げばいいのに…」

「しょうがないですよ、自分たちで手一杯なんですよ」

「そうなんかね。昔は美味しいものが食べられれば、みんな幸せだったんだけど。だから、ばあちゃんも私も一生懸命、美味しい野菜をいっぱい作って来たんだけど…マルも一生懸命、手伝っていたよ」

「でも、今はネットって言うのもあって、そこでは、困っている人や、人だけで無くて、動物たちも、みんなで助けてくれる世の中になって来たので、きっとマルも助けてもらえると思います」

「そうなの。それは心強いね。安心したよ」

愛犬

第二章

とは言ってもネットには疎く、どうすれば良いのだろうと思いつつも、酷く落ち込んでいた様子のお隣りさんが見せてくれた笑顔、"この人の為にも"と思わずにはいられませんでした。

取りあえず、地元の心当たりに電話を入れ続けましたが、やはり、直ぐに良い返事をもらえる人も無く、ネットにあかるい息子(おばあちゃんから孫にあたる)に、SNSで引き取り手探しを頼んでみると

 

「マルは雑種でしょ?難しいと思うよ。それより、家で引き取れないの?」
 

「雑種は難しいの?雑種なのかな?父さんも良くわからないけど…マルはとてもお利口さんだし、それに真っ白で格好いいけどなぁ」
 

「ペットショップにはいない犬だよね…。ねぇ、飼っちゃ駄目なの」
 

「家で引き取りたいのは山々なんだけど、この前も猫を飼っていた人がいて、マンションの会合でお願いしていたけど、何が何でも最初に駄目って決めていたから、駄目だっていう人がいて…。それも鳴き声がうるさいからって、無く猫じゃないからって言っても聞かなくて。犬は完全に無理だと思うよ」
 

「僕が頼んでみるよ」
 

「それは…。でも、その時は父さんが頼むから…
でも、マルはこんな自然がいっぱいで、生き生き暮らせていたのに、都会のマンションに閉じ込めたら、可哀想な気もするし、もう少しこっちで探してみるよ」

 

「じゃあ、どうやって探すの?」
 

「やっぱりネットは駄目なのかな?」
 

「一応、僕のSNSであたってみるけど、自信はないよ、それに、この辺りの人が見つかるかどうかも…。」
 

「ありがとう、父さんは地元の愛護センターに聞いてみるから」
 

「愛護センターって、さっき隣のおばさんが、TVで所長が怒っているって言ってたところ?父さんも怒られるんじゃないの」
 

「聞くだけ聞いてみるよ、名前が愛護だし、国や県でやっているだから。それに、引き取り手の探し方を教えてくれるかも」
 

愛護センターに電話を入れてみると丁寧に教えてくれましたが
 

「先ず、自分で引き取り手を探して下さい。どうしても引き取り手がいない時にこちらにお越し下さい。基本的に飼い主の都合での引取りは行っておりませんが、飼い主が亡くなられたのであればお引き受け致します」
 

心当たりを当たっても駄目だった時の事を話すと、犬の保護団体さんを二ヵ所教えてくれました。
電話を入れてみると

 

「こちらでは、純血の犬しか保護していないので、申し訳ございません」
 

「純血種とは?」
 

純血種って説明を聞いてもよくわかりませんでしたが、マルは該当しないようで駄目でした。純血というならば、最近も色々な犬種が生まれる中で、マルはこの地方の犬で、もっと純血のように思えますが…。保護犬といっても、里親になってくれる人は、人気の犬種に拘る人も多くてとの事でした。

気を取り直して、次を当たってみると

 

「一般の方の飼い犬の引取りは致しておりません」
 

「どうすればよろしいのですか?」
 

「愛護センターから、引取りますので一度、預けていただいて」
 

「愛護センターの方から教えていただいたのですが?」
 

「たぶん、愛護センターで引きとった後の事をおっしゃったのではないでしょうか」


「そうですか、もう一度確認してみます」
 

その日は、時間が押してしまい、愛護センターは閉まって電話は繋がりませんでした。

後片付けを任せてしまった妻や妹に

 

「ごめん、ごめん、マルのこれからが決まらなくて…」
 

「私こそ、ごめんね、私が引き取れば良いのだけど」
 

「しょうがないよ、夜勤もあるし、救急の仕事は時間が不規則だからマルも可哀想だよ」
 

「地元の友達にも当たってみたけど、やっぱり、急には難しいって」
 

「でも、大丈夫だよ。もしもの時は俺が見るから」
 

「お兄ちゃんのマンションもペット禁止でしょ」
 

「いいんだよ。ペットじゃないよ。母さんの大切な家族だから」
 

「無理しないでね」


とは言ったものの、マンションの件は、一切、耳を貸してくれない住民の頑固顔を思い浮かべると、とてつもない壁を感じました。

ふと、視線を下すとそんな私をマルが優しいまなざしで見ているのに気が付きました。


それは、亡くなった母がいつも見せてくれた優しい眼差しの様…

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第三章 最終話

マルと散歩に出ました。久しぶりです。帰省の時はマルを中心に、山間の田園風景を眺めながらよく家族で散歩しました。とりわけ子供たちは大喜び、マルと一緒にはしゃいだ姿は今も忘れません。今は日も暮れ、夕日の赤見が消え、美しい星空に変わっています。輝く星々、どんなに着飾った人工物でも敵わない、その美しさは心に強く響きます…。マルと一緒に歩く道筋、都会の虚しさを思い出しつつ、もちろんですが言葉を交わす訳でも無いマルの後ろ姿を見ながら掛け替えのない大切な時間を感じていました…。



「そうか、まだまだおばあちゃんのところに行くのは早いか、じゃあ、しっかり頑張って新しい飼い主さんを見つけるんだよ」「…」「これは、感染予防の注射だから、これを打てば譲渡会に出られるから、安心だよ」マルは目を丸くして、獣医師さんを見つめ、大人しく注射を打たれました。
 


「昨日、電話をしたものですが、心当たりを当たったのですが見つける事が出来ず、どうしても明後日には、一度、東京の自宅に戻らなくてはいけないので、一時的に預かっていただく事は出来ませんか?」


「話は聞いています。収容の条件にはあたりますが、一時預かりとは?」


「マルは絶対に殺処分にはさせたくないので、私がこの村に戻りマルを引き取りたいと思っていますので」


「そうですか。でも、そんな簡単に、本当に出来ますか?」


「マルは絶対に死なせたくないですから、私たちが今の仕事を辞めて母の家に戻ることでマルの命を繋げるのなら、その為には何でもします」


「そうですか。では、私の話しも少し聞いて下さい。私はこの愛護センターに所長として赴任して来たばかりですが殺処分に関しては反対派です。そして、社会があれば必ず、孤児は発生すると認識しています。単に蛇口を絞るように発生源に拘ったところで、いつまで経っても殺処分を無くせないことを身に染みて知っています。その大切な命、社会に託された責任はこの愛護センターにあると考えています。これからは、全力を尽くし、収容された犬猫の里親さんを見つける命を繋ぐ場所として、その責を担っていきます。お気持ちはお察し致しますが、職を辞めて、こちらに戻るとは言ってもご家族がいらっしゃるとお聞きしておりますから、仕事だけでは無く様々な問題をクリアする必要性を強く感じます。ですから、私たちにマル君を託すという事を考えてはいかがでしょうか?もちろん、お母さんの愛犬、息子さんが引き継ぐという責任は有るかも知れませんが、私は社会の一員として人生を全うされたお母さん、そのお母さんの想いを、社会が繋ぐことも大切な事だと思っています。」


「…、逆に怒られるとばかり思っていました…、、本当にありがたいお話です。ただ、マルを引き取ると決心していましたので、まだ…。考えがまとまらなくて…」


「いずれにしても、どうぞ、マル君は連れて来て下さい。直ぐに里親さんの募集を掛けるという訳でもありませんから、じっくりと家族とご相談しながら決めて下さい。」


「ありがとうございます。本当に予想外のお話でしたので、なんて言って良いのか…ありがとうございます。」


「確かに全国のセンターが命を繋ぐことを重視しているかと言うと、何とも言えません。やはり、前任者の様に蛇口を絞ると言って、極力、収容数を減らす事を目指すセンターも確かにあります。そんなセンターは、お母さんの様に犬猫たちと助け合い、共に暮らし、先立ってしまった人々の事さえ、無責任な飼い主の範ちゅうに数え、その大切な人々の営みさえ、社会悪の様な扱いをしています。私はその実状を変えることが出来れば、きっと日本の殺処分を無くすことができる、それだけでは無い社会の大切な未来が開けると思っています…。余計なこと言ってしまいましたが、どうぞ、安心して下さい」


「私もマルの目を見るたびに、都会での日常に、とても大切なものを忘れてしまっているのではと思うばかりで、、今回、戻ろうと…。でも、安心しました。明日、マルを連れて行きます」


「明日、私は不在ですが、わかるようにしておきますので、お気を付けてお越し下さい」


「ありがとうございます。どうぞ、よろしくお願い致します」

 

 



「マル君、良い里親さんが見つかりましたよ」


「本当ですか、本当にありがとうございます。どんな方ですか…。すいません、本当は私がみなくてはならなかったのに…」


「そんなことは無いですよ。みんな一緒、心配だよね。実はすでに仕事をリタイアされた方で、年齢も有って、子犬は難しいけれどと、成犬を探していたご夫婦で、マル君を一目で気に入ってくれましたよ。貴方の事を話したら、お近くにお越しの際は、ぜひ、マル君に会いに立ち寄って下さいって言ってくれていましたよ。」


「本当にありがたいです。ぜひ、ご挨拶にお伺いさせていただきます」


「マル君も喜ぶね」


「所長さん、本当にありがとうございました…。感謝しきれないです」


「そんなことないよ。私たちの仕事だし、譲渡会を手伝ってくれた愛護団体さんや、職員、そして、譲渡会を広めてくれた皆さん、そして、命を繋ごうと集まってくれた方々、みんなみんな、大切な命、繋ぐことを当たり前に想っている人々だから、礼など必要ないよ」

 



「今回はマルを引き取っていただいて本当にありがとうございました…」


優しそうなご夫婦の傍から、キラキラと目を輝かせてマルが走って来ました。



若干の補足をさせていただきますと、文章内の時系列は前後しております。その中で、第一章のマルの注射は、譲渡会の為の予防注射。息子さんが不安を抱いたセンター職員のぼやきも前所長の影響「孤児の発生=無責任な飼い主」が抜け切っていない故の発言。また、第三章で本人は、ほぼ故郷に戻る決心は付いていましたが、息子さんの転校が気がかりで、所長さんの提案に甘える結果になりましたが、偶然は重なるもので、マルを引き取ったご夫婦は、息子がネットに上げたマルの情報で譲渡会に訪れ、里親となりました。
今、息子(おばあちゃんの)家族は命を繋ぐ譲渡促進の応援や保護団体さんの支援を続けています。
そして、この所長さんと同じ志を持った方々が、全国各地で命を繋ぐ大切さを広め、命を繋ぐ選択が当り前になったことで、日本の殺処分はゼロになりました…。それを人は絆と呼びました。

 

 


この話はフィクションでしたが、同じような状況に置かれる犬猫が年間数万匹を数え、殺処分されている事は現実です。飼い主が先立つ、病気などその6割以上が健康上の理由と言われています。確かに飼い犬猫を守れるのは飼い主だけかも知れませんが、もしこの様なエンディング、命を繋ぐことを一番に考える社会が当り前になれば、きっと日本の殺処分は無くなり、そして、真の絆が生まれると信じています。子供たちに残したい未来は、今を生きる私たちの行動にかかっています。

愛犬
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一匹でも多くの犬猫が幸せに巡り逢えますように

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