旅するワンコ
- Takeshi Kimishima
- 2 日前
- 読了時間: 4分

GWは多くの方が旅する機会でもありますね。そんな旅ウィークにちなみ、江戸時代「奇跡の犬のお伊勢参り、おかげ犬」について調べてみました。
「犬のお伊勢参り」とは、江戸時代に病気やその他の理由で伊勢神宮に参拝できない飼い主に代わって、犬が代理で参拝する「代参犬」、通称「おかげ犬」と呼ばれる風習を指します。このユニークな文化は、伊勢神宮への深い信仰心と、人と犬の強い絆、そして当時の人々の厚い善意に支えられたものでした。以下に、その歴史、背景、具体的な仕組み、文化的意義について詳しく説明します。
江戸時代には全国から多くの庶民が参拝する「お伊勢参り」が盛んでした。一生に一度は訪れたいとされる聖地でしたが、旅費や体力、病気などの理由で参拝が難しい人々も多くいました。そこで、飼い犬に代参を託すという風習が生まれたのです。
この風習は特に江戸時代中期から後期(18世紀末~19世紀初頭)に広まり、記録によれば「おかげ参り」と呼ばれる大規模な参拝ブーム(特に1771年や1830年など、約60年周期で起こった)が発生した時期に顕著でした。 「おかげ犬」の存在は、庶民の信仰心と動物への信頼を象徴するエピソードとして、現代でも語り継がれています。
「おかげ犬」は、飼い主に代わって伊勢神宮まで旅をし、参拝を果たす犬たちです。以下は、その具体的なプロセスです:
準備
犬の首にしめ縄を巻き、風呂敷や袋に飼い主の名前と参拝の目的を記した手紙、道中の食費や宿代として使うための銭(お金)を括り付けます。これにより、犬が「おかげ犬」であることが一目で分かり、旅の目的が明確にされました。
旅の様子
犬は単独で、または伊勢参りの人々に連れられて旅をしました。道行く人々は、信仰心からこの犬を支援し、食事や寝床を提供しました。犬を助けることは「徳を積む」行為と考えられ、時には銭を追加で巻きつけたり、重くなった銭を銀に替える親切な人もいました。犬は人間の参拝者に同行しながら、時には何年もかけて伊勢神宮に到達しました。
伊勢神宮での参拝
伊勢神宮に到着した「おかげ犬」は、宮司から竹筒に入ったお札やお守りを受け取りました。その後、犬は再び人々の助けを借りながら、飼い主の元へ帰還しました。
帰還
無事に帰った犬は、飼い主に神宮のお札を届け、代参を果たしたとされました。この行為は、飼い主にとって大きな精神的支えとなり、信仰の証とされました。
実例と記録
「おかげ犬」の物語には、具体的な記録や伝承が残っています。以下はその代表例です。
シロの物語
福島県須賀川市に伝わる「おかげ犬シロ」は、飼い主の代わりに伊勢神宮へ旅し、無事に帰還した忠犬として知られます。シロの偉業を称え、須賀川には「犬塚」と呼ばれる碑が建てられています。
松浦静山の記録
平戸藩主・松浦静山は、随筆集『甲子夜話』(1821年)に、伊勢参りの途中で出会った「おかげ犬」と2日間同行したエピソードを記しています。この記録は、当時の人々が犬を尊重し、信仰の一環として支援していたことを示しています。
文政13年(1830年)の記録
『御陰参宮文政神異記』には、式年遷宮の翌年に多くの参拝者とともに犬が伊勢神宮を訪れた様子が記載されています。この時期は「おかげ参り」のピークで、犬の参拝も特に多く記録されました。
文化的意義
「おかげ犬」は、単なる代参の風習を超えて、以下の点で重要な文化的意義を持っています:
人と犬の絆
飼い主が犬に神聖な使命を託すことは、犬への深い信頼と愛情を示しています。犬が旅を完遂する姿は、忠誠心と賢さの象徴として讃えられました。
共同体の善意
犬を助けることが徳を積む行為とされた背景には、江戸時代の厚い信仰心と共同体意識があります。知らない犬を支援する行為は、現代では想像しにくいほどの無私の精神を反映しています。
信仰の多様性
伊勢神宮は神聖な場所ですが、犬が参拝すること自体、当時の柔軟な信仰観を示しています。ただし、現代の伊勢神宮ではペットの境内立ち入りが禁止されており、この点は歴史的な変化を物語っています。
物語としての魅力
「おかげ犬」は、現代でも感動的な物語として語り継がれ、書籍や観光資源として活用されています。例えば、仁科邦男の『犬の伊勢参り』(平凡社)は、この風習の詳細を掘り下げたノンフィクションとして評価されていいます。
現代での「おかげ犬」
現代では、実際の「おかげ犬」のような代参は行われていませんが、この風習は観光や文化の一環として引き継がれています:
おかげ横丁での体験
三重県伊勢市のおかげ横丁では、飼い犬にしめ縄を巻いて「おかげ犬」に扮する体験サービスが人気です。観光客は愛犬を連れて記念撮影などを楽しみます。
飼い主の代わりに伊勢神宮を参拝し、長い旅を完遂した「おかげ犬」の風習は感動でもあり、人と犬との間に築かれていた絆に子孫として、心から誇りに思います。そして、私たちは未来のこどもたちに何を残せるのでしょうか?
国の借金は残しそうですが…
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