チーズの生い立ち(創作)
- Takeshi Kimishima
- 15 分前
- 読了時間: 4分
いつも穏やかに、アンパンマンを支えるチーズ。その愛らしい姿の裏には、ひっそりと秘められた物語がありそうですね。創作ですがどうぞお楽しみ下さい。
チーズとパン工場の家族
むかしむかし、パン工場の裏にある森の奥で、チーズという子犬とお母さんワンコが彷徨っていました。二匹は長い旅の末、ボロボロの毛並みで、空腹と疲れでフラフラでした。ある嵐の夜、二匹はパン工場から漂う甘いパンの香りに導かれ、工場の扉の前で倒れてしまいました。
「ワン…ワン…」チーズの小さな声に気づいたのは、ジャムおじさんでした。工場の扉を開けると、びしょ濡れの二匹が震えているのを見つけたのです。「これは大変だ!」ジャムおじさんはすぐにバタコさんを呼び、二人でチーズとお母さんワンコを暖かい毛布で包みました。
パン工場の中は、焼きたてのパンの香りと暖炉の火でポカポカ。バタコさんはチーズに温かいミルクを、ジャムおじさんはお母さんワンコに栄養たっぷりのスープを飲ませました。「大丈夫だよ、ここは安全なところさ」とジャムおじさんが優しく声をかけると、チーズは小さな尻尾を弱々しく振りました。でも、お母さんワンコは旅の疲れが深く、体が弱りきっていました。
数日間、ジャムおじさんとバタコさんは懸命に二匹を看病しました。アンパンマンやカレーパンマン、しょくぱんまんも応援にやってきて、チーズに「一緒に遊ぼう!」と元気づけました。しかし、お母さんワンコの体は回復せず、ある静かな夜、星空の下で静かに息を引き取りました。「チーズ、君のお母さんは星になって、いつも君を見守ってくれる」と、ジャムおじさんは涙をこらえながらチーズを抱きしめました。
チーズは悲しみに暮れました。お母さんがいない淋しさで、ご飯も食べず、工場の隅で小さく丸まって過ごす日々が続きました。バタコさんは心配そうにチーズを見つめ、「チーズ、元気を出して。私たち、チーズのことが大好きなんだから」と囁きました。でも、チーズの目はうつろで、尻尾はピクリとも動きません。
そんなある日、ばいきんまんがパン工場に悪戯をしにやってきました。「ヒヒヒ!アンパンマンの顔を盗んでやる!」と、ばいきんまんが工場に忍び込んだのです。いつもならチーズが「ワンワン!」と吠えて知らせてくれるのに、その日は静かでした。アンパンマンはピンチに陥り、ばいきんまんに追い詰められてしまいました。
その時、チーズの耳にアンパンマンの叫び声が聞こえてきました。「チーズ、助けてくれ!」チーズの心に、突然お母さんワンコの優しい顔が浮かびました。「チーズ、強く生きて。愛してくれる人たちを大切にね」という声が聞こえた気がしました。チーズはハッと立ち上がり、力いっぱい「ワンワン!」と吠えました。その声にジャムおじさんとバタコさんが気づき、すぐにアンパンマンを助けに飛び出しました。
カレーパンマンの辛えカレーパンチと、しょくぱんまんのしょくぱんスライスで、ばいきんまんは「また来るぞー!」と逃げていきました。アンパンマンはチーズに駆け寄り、「チーズ、ありがとう!君のおかげで助かったよ!」と笑顔で言いました。チーズは初めて、尻尾を大きく振りました。ジャムおじさんとバタコさんも「チーズ、よくやった!」と抱きしめ、チーズの好きなチーズパンをプレゼントしました。
それから、チーズは少しずつ元気を取り戻しました。ジャムおじさんの焼くパンの香り、バタコさんの優しい手、アンパンマンたちの笑顔が、チーズの心を温めました。チーズは気づいたのです。「お母さんは星になったけど、僕には新しい家族がいる。パン工場の皆が、僕を愛してくれるんだ」と。
月日は流れ、チーズは立派なワンコに成長しました。パン工場を守る勇敢な番犬として、ばいきんまんの悪戯を「ワンワン!」と追い払い、アンパンマンの冒険にもついていくようになりました。チーズが吠えるたびに、ジャムおじさんは笑い、バタコさんは目を細め、アンパンマンは「チーズ、最高の仲間だ!」と褒めました。
そしてある夜、チーズはパン工場の屋根に寝そべり、星空を見上げました。キラキラ光る星の中に、お母さんワンコの笑顔が見えた気がしました。「チーズ、幸せになってくれてありがとう」と囁くような風が吹き、チーズは「ワン!」と元気に吠えました。
チーズはパン工場の大切な家族になり、みんなに愛されながら、今日もアンパンマンと一緒に冒険を続けています。
おしまい

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