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借りてきた猫

  • 執筆者の写真: Takeshi Kimishima
    Takeshi Kimishima
  • 9月27日
  • 読了時間: 3分
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借りてきた猫


むかしむかし、ある小さな町に、普段はおとなしくて目立たない少年、太郎が住んでいました。太郎は学校でも静かで、友達と騒ぐこともなく、いつも本を読んだり、家の裏庭で空を眺めたりしていました。町の人たちは彼のことを「まるで影のようだ」と笑って言うほどでした。


ある日、太郎は町の古い神社で不思議な猫に出会いました。その猫は、ふわふわの白い毛に、キラキラと光るエメラルド色の目を持っていました。猫は太郎を見つめると、まるで話しかけるように「ニャオ」と一鳴き。すると、どこからともなく風が吹き、猫の首にかけられた小さな鈴がチリンと鳴りました。


「ねえ、少年。ちょっと私を借りてみない?」

太郎はびっくりして辺りを見回しましたが、誰もいません。声はなんとその猫から聞こえてきたのです!

「え、君がしゃべったの?」と太郎が尋ねると、猫はニヤリと笑い(本当に猫が笑ったように見えた!)、こう言いました。

「私は『借りてきた猫』。特別な時にだけ現れるのさ。君の願いを一つ叶えてあげるよ。ただし、条件がある。私と一緒に一日過ごすこと!」

太郎は半信半疑でしたが、なんだか面白そうだと感じました。「願いかぁ…。じゃあ、僕、もっと自信を持ってみんなと話したいな」と呟きました。

「よし、決まり!」と猫は跳ね上がり、鈴をチリンと鳴らすと、太郎の体がふわっと軽くなった気がしました。


その日から、太郎はまるで別人のように変わりました。学校では、いつもなら黙っている授業で手を挙げて発言したり、友達を笑わせる冗談を言ったり。放課後には、近所の子供たちと一緒に町の広場で鬼ごっこをして、大笑いしながら走り回りました。町の人たちは目を丸くして、「太郎、まるで借りてきた猫のようだ!」と驚きました。


でも、猫にはもう一つの秘密がありました。夜になると、猫は太郎を連れて町の外れの森へ行き、月明かりの下で不思議なダンスを披露しました。猫の鈴が鳴るたびに、森の木々がキラキラ光り、動物たちが集まってきて一緒に踊り出したのです。キツネやタヌキ、ウサギまでが輪になって飛び跳ね、太郎も思わず笑いながら一緒に踊りました。

「ねえ、猫さん、なんでこんな楽しいことを教えてくれるの?」と太郎が聞くと、猫は目を細めて言いました。

「君はね、いつも心の中にこんな元気な自分を隠してたんだよ。私がしたのは、ちょっとその扉を開けてあげただけさ。」


一日の終わり、猫は静かに言いました。「私の役目はここまで。またいつか、君が自分を見失いそうになったら会おうね。」そして、チリンと鈴を鳴らすと、猫は月の光に溶けるように消えてしまいました。


次の日、太郎はまたいつもの静かな少年に戻りました。でも、心の中にはあの猫との冒険がキラキラと輝いていました。それ以来、太郎は少しずつ自分に自信を持ち、友達と笑い合ったり、好きなことを堂々と言えるようになりました。町の人たちは「あの日の太郎はまるで借りてきた猫だったけど、今の太郎もなかなかいいぞ!」と笑うのでした。


そして、時々、夜空にキラリと光る星を見ると、太郎はあの猫のエメラルド色の目を思い出し、そっと微笑むのでした。

 
 
 

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