12月18日、映画界の巨匠スティーブン・スピルバーグ監督の誕生日
- Takeshi Kimishima

- 12 分前
- 読了時間: 3分
約30万年前、氷河期の厳しい冬。ヨーロッパの山岳地帯にある大きな洞窟に、ホモ・サピエンスの小さな集団が暮らしていた。
彼らは10人ほど。老人、若者、子どもたち。争いなど知らず、獲物を分け合い、寒い夜は体を寄せ合い、歌うような低い声で語り合いながら眠る。洞窟の壁には、指で描いた動物の絵が優しく並び、自然と深く結びついた穏やかな日々が続いていた。
そんな大雪の夜、洞窟の入り口近くに、突然異様な光が落ちた。タイムマシンから現れたのは、インディ・ドッグだった。
古びた革ジャケットを羽織り、インディ・ジョーンズ風の帽子を被り、小さめの丸メガネをかけたコッカー・スパニエル混じりのワンコヒューマン。犬から進化した未来の考古学者である彼は、実験中の事故でこの時代に飛ばされてしまった。
その日、洞窟の中は、大吹雪で冷えきり、皆で不安げに体を寄せ合っている。
インディは外の猛吹雪を見て、ため息をついた。
「……、さすがに可哀想だな。ここは、火を知らない時代かな?一夜だけ、暖を取らせてあげるくらいなら……歴史は変わらないはず。」
彼はジャケットのポケットから小型の火打ちツールを取り出し、洞窟の奥に積まれた枯れ枝に火を移す。ぽっと小さな炎が灯り、たちまち洞窟全体を柔らかな光と暖かさで満たした。
集団の人々は最初、驚いて後ずさった。だが、火の暖かさに触れると、ゆっくりと輪になって近づいてきた。子どもたちは笑い、大人たちは穏やかな目で炎を見つめ、老人は静かに手を差し伸べる。誰も奪い合わず、ただ共に暖を取った。
インディは少し安心しながら、メガネをクイッと上げて呟く。
「火を教えてしまったけど、きっと上手く付き合っていけるさ。」
その夜、洞窟はこれまでにない暖かさに包まれ、人々は穏やかに眠りについた。
翌朝──。
雪は止んでいたが、火はまだ小さく燃え続けていた。
最初に異変が起きたのは、食卓でのことだった。
「肉を焼きたい」という若者が、先に火に近づけた。別の者が「みんなで順番に」と諭すが、若者は「俺が薪を集めてきたんだ」と言い返す。声が大きくなり、押し合いへし合いになる。子どもたちが泣き、老人が仲裁に入るが、誰もが「自分が先!」を主張し始めた。
火は暖かさを与えたはずだった….なのに、なぜか人々の心に小さな棘を生み、言葉に熱を帯びさせ、目を鋭くさせた。
インディは洞窟の隅でそれを見て、背筋が凍るのを感じた。
「……しまった。彼らは争いを知らなかった。火は暖かいけど、同時に『自分のもの』という意識も灯してしまったのか……?」
その日の夕方、集団は二手に分かれかけていた。火の管理をめぐって、声が荒げられ、棍棒が握られていた。
インディは静かに立ち上がり、帽子を深く被り直す。僕の余計な優しさだった。火は文明の始まりと教わってきたけど……同時に、争いの火種にもなる…。
彼は誰にも気づかれぬよう、洞窟を後にした。背後では、炎がぱちぱちと音を立て、人々の声が少しずつ高くなっていく。
雪原に立つインディは、一度だけ洞窟を振り返った。
「ごめんよ。君たちの平和な日々は、僕が触れたせいで、もう戻らないかもしれない。」
そして彼は、吹雪の残る太古の世界を後にした。
──おしまい。
もちろん、フィクションでしたが、いかがでしたか😅スティーブン・スピルバーグ監督の誕生日を記念しての短編SFドラマでした。
気を取り直して、良い一日を!🐶🎬








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